ちょっと深い代謝の話
6、脂質の消化について
脂肪分が多い食事と少ない食事で、そのあとのお腹のすき具合が違うと感じたことはありませんか?
極端に脂肪の少ない食事だと、早くお腹がすいてしまい、普段ならいらない間食が必要になった、という経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
というのも、タンパク質は胃から消化が始まりますが、脂質は十二指腸から消化が始まり、吸収に時間がかかるからです。
そのため、脂肪の多い食品は糖質やタンパク質が主体の食品に比べ、腹持ちが良くなります。
①中性脂肪の基本形
食品中に含まれる脂肪は、ほとんどが化学的に安定した中性脂肪の形をしています。
中性脂肪はグリセロールに3つの脂肪酸がついた形が基本形です。
そして、上述したように、中性脂肪は胃で消化されません。
十二指腸からが消化のスタートとなります。
②十二指腸での消化
十二指腸に脂肪分が入って来ると
まず胆嚢から「胆汁」が
次に膵臓から消化酵素の「リパーゼ」が
分泌されます。
脂肪(油)は水に溶けません。
その為、まず胆汁が脂肪を取り囲んで「ミセル」という粒を形成します。
これを「乳化」と呼びます。
乳化とは油と水のように、本来混ざり合わないものを均一に混ざり合うようにすることです。
例えばマヨネーズ。
マヨネーズは油や酢で出来ていますが、通常分離してしまいます。
そこで卵を加えます。
卵を加えることで油と酢が分離しないで混ざり合ったままの状態を保てるのです。
この場合卵が乳化剤のような役割を果たします。
胆汁も食事に含まれた脂肪を乳化させる役割があります。
そしてこの乳化した状態をミセルと呼ぶのです。
ミセルになることで、脂質は消化吸収されやすくなり、そのあとに膵臓から分泌される消化酵素のリパーゼが、脂質を
●モノグリセリド(グリセロール+1つの脂肪酸)
●脂肪酸 2つ
に分解します。
余談ですが、モノ、というのはギリシャ語で「1つ」という意味です。
モノグリセリド…1つのグリセロール+1つの脂肪酸
ジグリセリド…1つのグリセロール+2つの脂肪酸
トリグリセリド…1つのグリセロール+3つの脂肪酸(=中性脂肪)
となります。
モノグリセリドは別名モノアシルグリセロールなどともいわれます。
ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールも一緒です。
呼び方が違うだけです。
③小腸での吸収
脂質は小腸で吸収された後の経緯は、大きく2つのパターンに分かれます。
■リンパ管に入るパターン
1つ目はリンパ管に入るタイプです。
中性脂肪はリンパ管に入ります。
中性脂肪が分解されてできたモノグリセリドと脂肪酸は、小腸で吸収されます。
小腸で吸収されると、なんと再び中性脂肪に作り替えられます。
そして更に特別なタンパク質と結合し、「カイロミクロン」と呼ばれる分子になります。
カイロミクロンは、リンパの流れにのり、お腹や胸を通過したあと、静脈(鎖骨下静脈)に入ります。
鎖骨下静脈に入った後は、心臓をめぐって、今度は動脈に移り、全身に運ばれていきます。
体内で使われなかった余分な脂肪は肝臓や脂肪細胞に蓄えられます。
過度に蓄積されてしまうと「脂肪肝」や「皮下脂肪・内臓脂肪」になり兼ねない、注意が必要なものですね。
■おまけ■コレステロールの消化吸収について
ちなみに、コレステロールも脂質の仲間です。
コレステロールもリンパ管に入ります。
食品として摂られたコレステロールは、胆汁酸だけでできたミセルでは、溶解力が小さくなかなか乳化されません。
そこで中性脂肪が分解してできたモノグリセリドと混ざり合って「混合ミセル」を作ります。
コレステロールはこの混合ミセルに助けられ、小腸で吸収されます。
そのあとは中性脂肪と同じようにリンパ管に入り、全身に運ばれます。
■門脈に入るパターン
2つ目は門脈と呼ばれる血管に入るタイプです。
「MCTオイル」をご存じですか?
健康やダイエットなどにもおススメと言われる油です。
MCTオイルは「中鎖脂肪酸」と呼ばれる炭素の鎖が8~12個の短い脂肪酸で構成されます。
一般的な脂肪(中性脂肪など)は「長鎖脂肪酸」とも呼ばる炭素の鎖が14個以上の長い脂肪酸で構成されます。
つまりMCTのような中鎖脂肪酸は、長さが短いのです。
そのため、中性脂肪などの長鎖脂肪酸に比べて水に溶けやすいのが特徴で、ほとんどが「グリセロール」と「脂肪酸(3つ)」にまでしっかり分解されます。
そして、ブドウ糖やアミノ酸と一緒に門脈という血管に吸収され、肝臓に向かい、すぐにエネルギーとして使われます。
そうです、蓄積されずにエネルギーとして使われるのです。
つまり、摂取しても太りにくい、ということになります。
中鎖脂肪酸は「MCTオイル」という商品が有名ですが、ココナッツオイルに約60%含まれているほか、母乳や牛乳にも含まれています。
■まとめ
このように脂肪の吸収には大きく分けて2つのパターンがありますが、多くの方が口に入れているのは中性脂肪で、リンパ管に入るタイプです。
そして、このような長いプロセスを経る為、脂肪は、食後3、4時間経ってやっと吸収されるようになります。








